中小企業が儲かるチラシの作り方とは

はじめに
『チラシで商品が売れない』最近良く耳にする話しである。ところが新聞折込チラシは一週間で合計130枚以上も入る。新聞折込会社に聞いてみたが減るどころか増えているそうである。効果が無くてもチラシを作る。やはり中小企業の宣伝方法はチラシが主体だということだ。つまり売上が上がるかどうかは、チラシが鍵を握っているのである。

チラシで商品が売れなくなった最大の原因は、消費者の広告の見方が変わったことにある。マーケティング担当者も印刷会社も、このことを理解していないから、効果のないチラシを作ってしまうのです。

日本で最初に、情報化社会と言われて40年以上経ちました。今では情報氾濫社会になっています。その情報には広告がつきもので、今やありとあらゆる所に広告が氾濫しています。 広告には必ず新しいキャッチコピーやキャッチフレーズが考えられます。その文言は消費者にアピールするためにエスカレートして、今やオーバー表現が当たり前のようになっています。

広告の宣伝文句はウソだらけ
日常的にウソの広告が氾濫しているので、消費者は広告の誇大表現に驚かなくなったし、興味を惹かれなくなった。そして広告に対して懐疑的になり、うまい話しは信用しなくなった。

あなたは洗剤のコマーシャルを見て、本当に汚れたシャツが真っ白になると信じていますか? 信じているわけがない。誰でも白くなったのは見せかけで、新品のシャツが使われていることを知っている。肩こりの膏薬で肩こりがたちまち治ると信じていますか? これも肩こりが治るはずがなく、肩こりのひどい人はマッサージへ行くことが常識である。

これらの誰も信じていないウソの広告が氾濫している。テレビで朝から夜まで堂々と放送されている。同じく新聞にもウソの広告が溢れているのである。毎日のようにガンが治った書籍の広告があるが、年間数十万人の人がガンで亡くなっている。このようなウソが金を払えば新聞に堂々と掲載される。

このような状況では自分の知らない商品の広告を信じられないのである。つまり、あなたの提供する商品が非常に優れていても信用されない。むしろ優れていた方が信用されない。有名でない商品は優れていると認識されないからです。だから美しい商品写真も、テンポのいいキャッチフレーズも、洗練されたデザインも役に立たないのである。

現代人は理解する時間が無い
今の時代は情報過多になっている。たとえば朝起きるとテレビのスイッチを入れる。電車では新聞を読み、車に乗るとラジオを聞く。起きている間は常に情報が入る環境にある。ほとんどの情報は記憶に残ることが無く忘れられていく。人は情報を見るだけが精一杯になっているので、考えることが面倒くさいのである。何かを理解して判断が必要なものは避けるようになっている。

難しいものは避けるので、簡単なものだけを選ぶ習慣がついている。当然チラシの内容を理解しようとして読む人はいないのです。わかりにくいものは最初から見てもらえないのが普通です。チラシ作りのポイントは、ぱっと見てわかることです。どんな人でも理解できるように作る必要がある。極端に言えば小学生でも理解できるように作ることである。

チラシは印刷屋にまかせてはいけない 印刷会社はデザインの良いチラシを作ることに専念してきた。それは企業の担当者が『デザインの仕上がりに満足するから』である。つまり売れるかどうかについては責任が無いのです。最近はパソコンソフトの普及で、若い経験の少ないデザイナーが急増。見かけだけのデザインをしているチラシがますます増えている。

チラシを印刷するところはたくさんある。大きい印刷会社から小さな町の印刷屋までいれると、飲食店の数と変わらないくらい多い。またビジネス街には新しいプリントショップがどんどん出来ている。そして数が増えた分だけ価格競争が起き印刷代はかなり安くなっている。

あなたの会社では、印刷会社を決める判断基準はありますか。価格が安いだけで決めていませんか?それは大きな間違いです。

チラシはマーケティングと直結している。だからこそチラシは、会社のトップが責任を持って作らなければならない。担当者まかせにしては絶対にいけない。 ところがほとんどの企業はチラシ制作をマーケティング担当者にまかせている。そのマーケティング担当者は印刷業者にまかせている。これが売れないチラシを作ってしまう一番多いパターンである。

結論としてチラシを作るには、企業が自らの責任でマーケティングをもとにして企画を練り、チラシの内容を決定してから印刷会社に発注するべきである。それ以外に成功する方法はありません。

チラシにたくさん商品を入れてしまう間違い
チラシに目一杯の情報を入れる間違い。『何でもかんでも商品を詰め込んでおけば、どれかは興味を持ってもらえるだろう』『消費者は一人一人違うからたくさんの種類の商品を入れる必要がある』これは全くの誤解である。

人間の目はいい加減にしかものを見ていないのをご存じでしたか。脳にしても、集中しない状態では何を見ても記憶しないように出来ているのです。幸運にもあなたのチラシを見てもらえたとしても、数分後には見たことも忘れてしまうのです。

企業は受け取って欲しい情報を絞り込んで、まず読む人の心の目を開かせることが先決です。情報過多の時代に、とりとめのない商品情報の垂れ流しは消費者に拒否されるだけです。脳は感動したことは記憶回路に留めやすいが、普通の事柄は記憶しないつくりになっている。だから情報が多いだけでは何の役にも立たないのです。

カラー写真のほうが良いという間違い
見栄えがいいのはカラーチラシです。1色のチラシは見劣りします。しかしカラーチラシの方が、反応が良いというデータはありません。写真そのものが絶対必要かどうか、もっと慎重に考慮すべきです。

『百聞は一見に如かず』ということわざがありますが、このことわざ自体が文字であり、絵でも写真でも表現できません。本来物事を伝えるのは、写真より文字の方が遙かに優れているのです。

百聞は一見に如かずと言うのは、現物を見ることであり絵や写真をみることではありません。現物は立体的で匂いがしたり、音がしたり味があります。写真とは全く情報量が違うのです。

ところが多くのデザイナーは写真を中心にしてチラシをつくっている。これは全く本末転倒の間違いである。もともと日本人は右脳より左脳型の思考パターンですから、文章のほうが伝わりやすい。だから正しいチラシの作り方は、まず文章を企画していき、補足説明的に写真を使うのです。

特に色の鮮やかさが売り物の宝石・家具・服飾品などの商品販売、家具・調度品・設備が売り物のホテル、旅館、高級レストランはカラー写真が効果的に使えます。しかし国産牛肉と輸入肉のロースは写真では区別がつきません。新鮮野菜や魚介類は本物を撮影出来ないのでイメージ写真を入れている。ウソの写真を入れて何になるのか不思議である。

恐怖心を煽るキャッチコピーは無意味
このことについては興味深いデータがあります。1960年に社会心理学者のハワード・レヴァンタールがイエール大学で行った『恐怖の実験』である。学生を二つのグループに分けて破傷風の恐ろしさと予防接種の重要性を説いたパンフレットを渡して、大学の保健所で無料の予防接種が受けられると案内した。

恐怖度の高いバージョンのグループと低いグループに分けて、パンフレットも説明の仕方も相当の差をつけた。そして後日アンケートをとったところ、恐怖度の高いバージョンのグループのほうが予防接種を進んで受ける意志が多いように見受けられた。ところが実際に予防接種を受けた学生の数は、どちらのグループもおなじだったのです。この結果によると恐怖心をあおっても人の行動が変わらないことを示している。

消費者が読むという前提で作る間違い。
ほとんどのチラシは、どのように読まれるかを考えて作られる。だからこそデザインやキャッチコピーばかりが注目される。いくら出来の良いチラシでも読まれなければ意味がない。新聞折込でも、手渡しでも読書率は0・1%以下です。反応を上げるには読書率を上げることが一番です。

ところが読書率を上げる対策をしているチラシがほとんどない。どのチラシも同じ紙を使っている。同じサイズで印刷も縦長が多い。オリジナル性も自己主張も感じられない。これでは手にとって見られないままゴミ箱いきになる。

クーポンで集客は間違い
クーポン(割引券)は飲食店のチラシに多い。ホットペッパーというクーポンマガジンがリクルートから発行されているほどである。クーポンは効果があることが多いので魅力的です。だから新店オープンやリニューアルの場合には賛成です。しかし長期的にはプラスよりマイナスのほうが大きくなる。

初めはクーポンがきっかけで来店する。一時的に売上が増えるがすぐに元に戻る。するとまたクーポンを配る。その繰り返しを何回かしていると、お客はクーポンのある時しか来ないようになる。つまり定価で買うと損したように感じるからです。当然クーポン客ばかりでは店の収支が悪化する。これをクーポンあり地獄と言います。

チラシは独立した広告である
 広告媒体というとテレビ・ラジオ・広告塔・看板・新聞・電車(交通広告)・ チラシ・カタログ・雑誌などと、最近はインターネットのバナー広告・メール広告がある。

 これだけ多種類の媒体があるというのに、宣伝・広告としてひとくくりで論じられることが多い。さすがにテレビCMだけは別格の扱いをうけているが、あとの媒体については大差がない扱いを受けている。

私の考えですが、広告はチラシとその他に分けることができる。テレビも新聞も電車の車内吊りも、すべて単独では存在していない。いくつかの広告の集合の一つである。たとえばテレビCMはテレビモニターに連続して様々な企業の宣伝が流れている。新聞広告も一つの新聞にたくさんの広告が並んでいる。

交通広告は、吊り広告・ドア横・網棚の上・つり革などの広告のオンパレードの中の一つになってしまう。唯一チラシだけが単独の紙に個性を発揮出来るのである。家に例えるとマンション(集合住宅)と一戸建ての違いのようなものである。チラシはオリジナル性の高い広告である。

チラシの作り方・絞り込む
80対20の法則を使って、自社の売れ筋商品を絞り込む。チラシに掲載する商品はさらに1?3点に絞り込む。間違っても売れていない商品をチラシに載せてはいけません。次にお客様を絞り込む。性別・年齢・地域・趣味など一番多い客層を分析する。

徹底してフォーカスしなければインパクトがない。これはビジネス全般にいえることですが、ここでは詳しく解説できないので別の機会に話すことにします。簡単に例を挙げると『新鮮な海の幸を使った創作居酒屋』は珍しくありません。『明石昼網のたこと鯛が旨い創作居酒屋』を大阪で開店すればインパクトがあります。これを『瀬戸内海の新鮮魚介』ではぼけてくるのです。

次に絞り込んだ商品のセールスポイントを絞り込みます。なぜその商品が売れているのか?検証することが必要です。この作業は社内の人間で考えると間違いが起こることがあります。また気が付かないポイントがあるかもしれません。お客様にアンケートで意見を聞くのが正しいやり方です。その場合でも、○を付ける選択方式はダメです。必ず文章の記述式にしてください。お客様は気に入った商品のことは書いてくれるものです。

チラシの作り方・読ませるチラシの作り方
苦労して作ったチラシも、出来映えが満足するチラシでも、お金をたくさん掛けたチラシでも読まれなければ意味がない。反対に手書きをコピーして作ったチラシの方が注目される場合がある。

チラシの善し悪しは、読んでもらえるか読んでもらえないかで決まる。写真の美しさは関係ない。確かにビキニの女性の写真があれば、男性の気を引きます。しかしそれは写真を見るだけであって、文章を読むことにつながらない。カラーなのかそうでないかは関係ない。カラーチラシばかりの中に藁半紙の1色チラシがあれば目立ちます。その場合は1色チラシの勝ちです。

チラシの作り方・お客様のことを考えて作る
チラシを読ませるという考えは、お客様の視点でものを考えるということである。お客様は神様・お客様第一主義と言いながら、何と売る側の理屈を押しつけている企業が多いことか。チラシは売れていない商品を売るために作るケースが多いと思います。誰も買わない商品はどうしたって売れません。

そこで無理が出てくるのです。大幅な割引、誇張した表現やウソを平気で宣伝する。昔は騙されて買ったかも知れないが、今の消費者は賢くなっているので買わなくなっている。それをチラシの反応が悪いと勘違いしている。まさに本末転倒である。

チラシの作り方・単純にわかりやすい
チラシを手にした人が一瞬で内容がわかることが大事です。わからないと読んでもらえません。たとえばラーメン屋の一周年記念半額セール、アパレルの半期に一度の全品3割引セールなど、いつ・どこで・なにを・どのように・どうするかが明確になっているか点検すべきである。

こんな簡単なことが出来ていないチラシがほとんどである。だから集客できないし反応が無いのである。単純に商品を羅列したチラシでは読む価値がない。たとえばテレビの新製品を紹介する場合の説明が多重音声とか衛星放送チューナー内蔵あるいは消費電力が何ワットとか。スポーツを見るならワイドがどうとか。そんなことしかない。もっと気の利いた説明文を考えることがお客様本位である。

10畳のリビングで家族4人が映画を楽しむならこのテレビとか、6畳の和室で一人ドラマを楽しむならこの1台とか、テレビゲームもスポーツ番組も映画も楽しむならこれがお薦めのように。このような生活シーンをイメージさせるような言葉が、残念ながら使われていない。この生活シーンをイメージする写真も必要であろう。

文語はおもしろくない

人生楽ありゃ苦もあるさ

♪じーんせーい楽ありゃ♪くーもあるさー♪♪ダンダダダダッ

どちらが伝わりましたか?

人が行動を起こすのは感動するときである。感動は心が動くことで、心は感情の入った言葉によって動かされる。この感情の入った言葉を文字にすると口語になる。そして普段の会話している言葉の方が感動しやすい。これは凄く当然のことで今さら説明することもないと思う。ところがチラシを見てみると、何と味も素っ気もない文章の多いことか。

チラシの作り方・読みやすいレイアウト
一ヶ月間に一度も本を読んでいない人が55%もいる。日本人は読書好きな方であるが年々憂慮すべきことになっている。文庫本を読むことが苦手な人が半数いることを考慮しなければならない。マンガ・雑誌・新聞は読まれていることに注目すれば、チラシの作り方はそれを参考にするべきである。

いっそのことマンガチラシを作ればわかりやすい、そして読んでもらいやすいチラシができる。私のお客様にはお勧めしている。気をつけることは情報を多く入れすぎないことである。チラシを1万枚配布したとして全員が見込み客になることはありません。多くの人にわかってもらうようにしても意味がないので、徹底的に対象を絞り込んだチラシを作るのです。

30代の女性、結婚して1年以内の女性、60代の会社勤めの方のように絞り込みます。そして年配の人がターゲットの場合は文字を大きくします。字が小さいだけで敬遠されます。若いデザイナーにまかせると字を小さく作る傾向が強い。字が小さいとレイアウトがすっきりしてかっこよく見えるからです。しかしかっこいいだけで作るチラシは間違いなく売れません。デザインの良さと購買意欲に関係はありません。ただし見やすいデザインにしないと読んでもらえません。

チラシの作り方・興味を引くくキャッチコピー
『興味を引くこと』が大事。何を今さらわかりきっていると、あなたは言うでしょう。ところが実際にわかっていないと思われるキャッチコピーが多いのです。それを見ると、やはりわかっていない人が多いと気が付くわけです。興味とは何かをもう一度考えてみるべきです。

期間限定焼肉半額セールというチラシを見たと仮定します。このキャッチコピーの何に興味を惹かれますか?半額でしょうか、焼肉でしょうか、外食でしょうか。この中で半額に惹かれた人は店に行くかも知れませんが正規の価格で食べることはありません。焼肉に惹かれた人は肉屋へ肉を買いに行くでしょう。

外食に惹かれた人はレストランでの食事を楽しみたいと思うのですから混雑するセール期間は避けて行かないでしょう。そのまま忘れてしまうか、他の店へ行くことでしょう。ここで何を言いたいか、それは興味を惹けば何でもいいということではないということです。

半額セールでしか集客できないチラシを何回もやっていると、誰も正規の料金で食べに来ることが無くなります。当然収益率が悪化してしまい店を閉めることになるのです。だから興味を惹くと言っても普段の経営方針が重要になるのです。そしてチラシで宣伝することは、レストランで外食する楽しみをイメージさせることです。

たとえば忙しい主婦は食事の準備と片づけから、解放されたいといつも願っているのです。今度の週末はお母さんもゆっくり家族団らんが楽しめます。準備も後かたづけもいりません。このようなキャッチコピーだと主婦はそうしたいなあと同感してくれるでしょう。

あとはおすすめファミリーセットなり今だけ季節の特別メニューとかを食べたくなるような商品説明すれば行きたくなりますよ。場合によってはカード支払いが可能なことまで案内すれば、給料日まで手持ちの現金が少ない人でも安心して来ることが出来ます。いつからチラシは割引の案内やバーゲンの案内になったのか。経営者は安売り競争していればいつかは破綻することに気がつくべきである。

しずるを売る
ここで重要なことは『人間の脳はどんどん忘れる』ということです。まず覚えようと思っていても80%以上は忘れていくようになっている。それも知ってから1分で忘れていくのである。

感情に訴える言葉はなにか?それは形容詞である。この形容詞が人の感情に響いてくるのである。そしてこの形容詞で読み手に疑似体験してもらうのである。この疑似体験こそが人の心を感動させて行動を起こさせるのです。

 焼き肉を例にしてみよう。最近テレビを見ていると若い女性タレントが焼肉を食べて美味しいという表現が『やわらかい』である。日頃はどんなに固い肉を食べているのか想像つかないが、肉のうまさが『やわらかい』とは情けない気もする。でもそれがわかりやすい表現なら焼肉を表現するときは『驚くほどやわらかい肉』でなければならない。しかし本当に良い肉の場合は『注意!たれを付けないで食べてください。肉の旨味が味わえるお肉です』